第156回芥川賞受賞作「しんせかい」

  • 2017/2/1
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芥川賞は純文学に贈られる賞で、小説の芸術性や形式に重きが置いて選考されるそうです。そう聞くと、今回「しんせかい」が受賞した理由が分かるような気がします。
本好きで重厚で骨太な小説を読む人なら「のれんに腕押し」の様な感覚を覚えるかもしれません。でも、この小説はその独特な読み心地を楽める作品とも言えるのではないでしょうか。

主人公は著者本人?!

「しんせかい」の著者は山下澄人さん、主人公は山下スミト、著者である山下澄人さんは倉本 聰さんの富良野塾2期生で、スミトも演劇塾の2期生とあれば、本人を自叙伝的なものだと想像できます。

ただ、インタビューなどで山下さん自身は『本当にあったこともあるし、なかったこともある。両方が混ざっているところもあります』と答えているようで、ノンフィクションではないようです。

朴とつだけどサラリと読める文章

大きな話題となった「火花」では言葉を駆使して情景が描かれていました。「しんせかい」では驚くほど平易な言葉で話が進みます。スミトはつかみどころのない性格で、シンプルな言葉遣いとマッチして不思議な雰囲気を醸し出します。
過去の自分の行動を、こうだったかな、ああだったかな、と思い出そうとしてすぐに出てこなければ、まあいい。とあっさり捨て置く箇所が何カ所も出てきます。

夢を求めて演劇塾に住み込みで入る人、と言えば情熱的な人と勝手に先入観で決めてしまっているからか、そのギャップを埋めるピースを探しながら読んでしまったように思います。
『小説って何かを伝えようとして書いているのでは』という思い込みもあり、筆者の意図を汲もうと思うのですが、すくってもすくっても、手のひらには何も残らないまま話が進みます。

けれど、最初から最後まで(最後の1行まで)つかみどころのない調子な分、読み終わった時にその独特なワールドを体験できた気分になります。主人公に賛同したりファンになったりする訳でも、どこかに感動したという訳でもないのですが、ふわふわとした読み心地を楽しんだという感じが残りました。
スミト君は終始つっこみどころ満載ですが、実際に著者が芥川賞を受賞していることを考えると、若い頃に動機はどうあれ「未知の世界」に飛び込んで体感することはかけがえのない財産になるのかな、とも考えさせられました。

もうひとつの短編を先に読むという選択肢も

この本にはもうひとつ『率直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺をしたのかどうか』が収録されています。これは入塾試験前夜の話で、作品の発表も時系列も『しんせかい』よりも前になります。

ですから、先にこちらを読んでから表題作に入っても良いのかもしれません。

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